在留資格更新中における銀行口座の凍結リスクと対応策

在留外国人の方々から「在留カードの更新申請を済ませたのに、銀行口座が凍結されてしまった」というご相談が増えています。給与の振込先や生活費の引き出しができなくなると、生活に大きな支障をきたします。また、雇用主にとっても、業務や支援体制に影響を与える深刻な問題です。
この記事では、通知の概要と制度上の理由、そして口座凍結を防ぐための実務的な対応策について、行政書士の視点からわかりやすく解説します。
▼こちらの記事で詳しく説明しております

在留期間満了後の銀行口座の利用制限について

社会的背景と金融機関の対応
近年、在留期間が終了した外国人の銀行口座が特殊詐欺などの犯罪に利用されるケースが相次いでいます。これを受け、金融機関ではリスク回避のために、在留期限が過ぎた外国人名義の口座からの出金や振込を一時的に制限する運用が拡大しています。
実際に在留資格更新手続き中であっても、銀行側がそれを確認できない場合には、「すでに出国した人物の口座が使われている=なりすましの可能性がある」と判断され、口座凍結の措置が取られることがあります。
制度上の根拠と「なりすまし」リスク
出入国管理制度上、在留期間が満了した外国人については、原則として日本を出国していると推定されます。そのため、満了日以降の銀行取引は、なりすましによる不正使用のリスクがあるものとして扱われます。
これはあくまでリスク管理上の措置であり、本人の違法行為を前提としたものではありません。とはいえ、結果的に正当な手続き中である外国人が不利益を被るケースも少なくありません。
警察庁通知の概要と現場の対応方針

2024年12月24日に警察庁が発出した事務連絡では、在留期間満了後の外国人の銀行取引について、次のような方針が示されました。
- 原則として、在留期限後の取引は「なりすましの疑いがある取引」とみなす
- ただし、在留期間の更新または在留資格変更の申請中であることが確認できる場合には、適法に在留中と判断し、取引制限を解除できる
つまり、申請中であることを金融機関が把握できれば、取引は継続可能なのです。
しかし、現場ではこの情報が金融機関に届かず、結果として凍結されてしまうことがあるため、外国人本人や支援者による積極的な情報提供が重要になります。
▶警察庁「在留期間が満了した外国人の預貯金口座からの現金出金及び他口座への振
込への対応等について」
凍結を防ぐための具体的な対応策

事前にできること
在留資格の更新や変更手続きは、満了日の3か月前から申請可能です。早めに手続きを行いましょう。申請をすると、在留カード裏面に申請受付印をもらうか、入管からの受付通知メールを保管しておくことが大切です。
こうした証拠書類を銀行に提示することで、「申請中であること」を伝えることができ、口座凍結を防げる可能性があります。なお、オンライン申請を行った場合でも、受付完了メールが証拠として有効です。
もし凍結されてしまったら
すでに口座が凍結されてしまった場合でも、落ち着いて対応すれば解決できることがあります。在留期間更新や資格変更を申請している証拠(在留カードの裏面や受付通知メールなど)を銀行に提示し、本人確認をしてもらうことで、取引制限を解除してもらえる可能性があります。
まとめ

在留期間満了に伴う銀行口座の凍結は、制度上の運用によるものであり、誰にでも起こり得るリスクです。しかし、早めの対応と正確な情報提供によって、多くのトラブルは回避できます。
当事務所では、在留資格手続きを得意としております。在留申請の手続きにお困りの際は、お気軽にご相談ください。