在留資格「経営・管理」改正へ ― 資本金要件3,000万円など大幅見直しのポイント

Akiko Ohkubo

2025年10月、日本で会社を経営する外国人のための「経営・管理」ビザのルールが大きく変わります。これまでよりも資本金や経営者の学歴・経験などが厳しく求められるようになり、準備不足のまま申請すると許可が難しくなる可能性があります。一方で、しっかりと条件を整えれば、日本で安定して事業を進められる道が開けるとも言えます。本記事では、今回の改正内容と外国人起業家への影響、そして今から準備しておくべきポイントをわかりやすく解説します。

当事務所からのお知らせ

現行制度(資本金500万円)の企業の役員就任のため(起業等)にかかる在留資格申請のお申込みは、9月12日までの受付とさせていただきます。

現行制度のおさらい

現在、日本で会社を経営するための「経営・管理」ビザを取得するには、事業の規模に関して一定の条件を満たす必要があります。具体的には、①日本に住む常勤の職員を2名以上雇用していること、または②資本金の額または出資の総額が500万円以上であること、のいずれかに該当すれば許可が得られる仕組みでした。つまり、職員を雇えない場合でも、500万円の資本金を準備できれば申請が可能でした。加えて、事業内容を示す事業計画書や、会社設立に必要な登記事項証明書などの提出も求められます。これらの要件は、これまで比較的ハードルが低く、外国人起業家が日本でスタートアップを始める際に活用しやすい制度として機能してきました。

改正のポイント

2025年10月から実施予定の改正では、「経営・管理」ビザの要件が大幅に厳格化されます。これまで「職員を雇う」か「資本金を準備する」かのどちらかで良かった条件が、「職員の雇用」と「資本金の準備」の両方を満たさなければならない形に変わります。さらに、資本金の額も500万円から3,000万円へと大幅に引き上げられ、外国人起業家にとっては高いハードルとなります。
また、申請人自身についても、学位や職務経験に関する要件が追加されます。具体的には、経営や事業に関する修士以上の学位を持っているか、または経営経験が3年以上あることが求められます。
加えて、事業計画書は専門家による評価が必須となり、提出資料も職員の住民票や賃金支払いに関する書類など、より詳細な裏付けが求められます。これにより、事業の実態や継続性が以前より厳しくチェックされることになります。

項目改正前改正後(2025年10月~)
常勤職員2名以上 または なし(資本金で代替可)1名以上(必須)
資本金または出資の総額要件500万円以上3,000万円以上(必須)
要件の関係職員か資本金のどちらかで可職員と資本金の両方必要
申請人の条件特になし修士以上の学位 または 経営経験3年以上
事業計画書自主作成で提出可専門家による評価が必須

改正による影響

今回の改正は、日本で起業を考える外国人にとって大きな影響をもたらします。最も大きな変化は、資本金が3,000万円以上に引き上げられたことです。従来の500万円であれば、個人投資家や小規模のスタートアップでも準備可能でしたが、3,000万円という水準は中小企業にとっても高額であり、これから日本で新規に事業を始める外国人には厳しい条件となります。

また、資本金の要件に加えて常勤職員の雇用も必須となったため、「資本金だけで起業できる」「職員だけ確保すればよい」という柔軟性がなくなります。したがって、起業の初期段階から十分な資金調達と雇用計画を整えることが不可欠になります。

さらに、申請人本人に対して学歴や経営経験の条件が課されることから、若手起業家や留学生がいきなり独立して会社を作るのは難しくなります。これにより、日本での外国人起業は「本格的な経営基盤を持つ人材」に絞られる傾向が強まるでしょう。

一方で、この改正によりビザ取得後に経営が行き詰まるケースや形だけの会社設立が減り、より安定的で持続可能なビジネスが日本に根付くことも期待されます。

改正後の申請を成功させるためのポイント

改正後の「経営・管理」ビザは、要件が大幅に厳しくなるため、申請準備を怠ると不許可となるリスクが格段に高まります。特に資本金3,000万円の準備や、常勤職員の雇用計画、事業計画書の専門家評価といった要件は、従来よりも綿密な準備と証拠資料の整備が求められます。

このような中で重要となるのが、専門家のサポートを受けながら事前に計画を固めることです。行政書士は、事業計画書の作成や必要書類の整備、さらには専門家評価の取得に至るまで、一貫して申請準備を支援できます。また、申請人の学歴や職務経歴の整理、証明書類の翻訳・提出方法なども、専門的な知識をもってサポートすることが可能です。

今後は、従来以上に「きちんと準備した申請」と「不十分な申請」との差が明確に結果に表れることになるでしょう。ビザ申請を確実に進めたい方は、早い段階から専門家に相談することを強くおすすめします。

●詳しくはパブリックコメント募集ページに掲載の改正する省令案をご確認ください。

まとめ

今回の改正により、「経営・管理」ビザの取得要件はこれまで以上に厳しくなります。資本金3,000万円や常勤職員の雇用、学歴や経験の条件など、準備すべき項目は多岐にわたります。しかし、十分な計画と専門的なサポートがあれば、許可を得て日本で安定した経営を行うことは可能です。早めの準備と専門家への相談が、成功への第一歩となります。

大久保章子
大久保章子
行政書士
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東京・池袋の行政書士事務所で、外国人ビザ、外国人雇用支援、設備投資などの補助金の申請サポートをしております。全国対応可能
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