特定技能で受け入れ可能な分野が拡大します(24年3月29日閣議決定)
2024年3月29日の閣議で、特定技能制度の拡大が決定されました。これまで12の産業・分野で受け入れが可能でしたが、4つの新たな分野が追加され、既存の3つの分野でも対象職種が追加されました。詳細については今後リリースされる予定ですが、この時点での情報をまとめました。
▶閣議決定についてはこちら:https://www.moj.go.jp/isa/applications/ssw/2024.03.29.kakugikettei.html
主な変更点のまとめ
新分野の追加が4分野、既存の分野がリニューアルし、試験区分が拡大・受け入れ可能な事業所が増えた分野が3分野あります。
特定技能の対象分野が12から16分野に拡大
自動車運送分野
自動車運送業分野では、「トラック運送業」「タクシー運送業」「バス運送業」の3区分が追加されます。
区分 | 対象業務 | 備考 (上乗せ、必要な免許当等) |
---|---|---|
トラック区分 | 事業用自動車(トラック)の運転、運転に付随する業務全般 | ・第一種運転免許、運転する車のサイズに合わせた免許 |
タクシー区分 | 事業用自動車(タクシー)の運転、運転に付随する業務全般 | ・第二種運転免許、運転する車のサイズに合わせた免許 ・N3相当以上の日本語レベルが必要 |
バス区分 | 事業用自動車(バス)の運転、運転に付随する業 務全般 | ・第二種運転免許、運転する車のサイズに合わせた免許 ・N3相当以上の日本語レベルが必要 |
鉄道分野
鉄道分野では、「軌道整備」「電気設備整備」「車両整備」「車両製造業」「運輸係員」の5区分が追加されます。
区分 | 対象業務 | 備考 (上乗せ、必要な免許当等) |
---|---|---|
軌道整備 | 軌道等の新設、改良、修繕に係る作業・検査業務等 | ー |
電気設備整備 | 電路設備、変電所等設備、電気機器等設備、信号保安設備、保安通信設備、 踏切保安設備等の新設、改良、修繕に係る作業・検査業務等 | ー |
車両整備 | 鉄道車両の整備業務等 | ー |
車両製造 | 鉄道車両、鉄道車両部品等の製造業務等 | ー |
運輸係員 | 駅係員、車掌、運転士等 | N3相当以上の日本語レベルが必要 |
※備考について:基本的な項目に上乗せになっている項目やその業務に従事するために必要な免許等を記載しております。特定技能1号は、「特定技能1号技能試験」の合格、一定レベル以上の日本語能力(N4以上)が必要になります。もしくは、技能実習2号修了者はこれらの試験が免除となります。
林業分野
林業分野では、育林、素材生産等の業務が対象になります。
木材産業分野
木材産業分野では、製材業、合板製造業等に係る木材の加工等の業務が対象になります。
全面リニューアルのあった分野(工業製品製造業分野)
「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」は「工業製品製造業分野」に名称が変更となり、7業務区分が追加されることになりました。追加される業務区分は、「紙器・段ボール箱製造」、「コンクリート製品製造」、「陶磁器製品製造」、「紡織製品製造」、「縫製」、「RPF製造」、「印刷・製本」です。これに伴い、鉄鋼、アルミサッシ、プラスチック製品、金属製品塗装、こん包関連の事業所を受け入れ可能な事業所として追加される(改正される)予定です。
区分 | 対象業務 | 備考 (上乗せ、必要な免許当等) |
---|---|---|
紙器・段ボール箱製造 | 紙器・段ボール箱製造(指導者の指示を理解し、又は自らの判断により、紙器・段ボール箱の製造工程の作業に従事) | ー |
コンクリート製品製造 | コンクリート製品製造(指導者の指示を理解し、又は自らの判断により、コンクリート製品の製造工程の作業に従事) | ー |
陶磁器製品製造 | 陶磁器製品製造(指導者の指示を理解し、又は自らの判断により、陶磁器製品の製造工程の作業に従事) | ー |
紡織製品製造 | 紡織製品製造(指導者の指示を理解し、又は自らの判断により、紡織製品の製造工程の作業に従事) | ー |
縫製 | 縫製(指導者の指示を理解し、又は自らの判断により、縫製工程の作業に従事) | ー |
RPF製造 | RPF製造(指導者の指示を理解し、又は自らの判断により、破砕・成形等の作業に従事) | ー |
印刷・製本 | 印刷・製本(指導者の指示を理解し、又は自らの判断により、オフセット印刷、グラビア印刷、製本の製造工程の作業に従事) | ー |
既存の分野の範囲が拡大した分野(飲食料品製造業、造船・舶用工業分野)
飲食料品製造業
飲食料品製造業では、今までの業務区分にスーパーマーケットの総菜製造業務も対象にになります。
造船・舶用工業分野
造船・舶用工業分野では、既存の業務区分が「造船」「舶用機械」「舶用電気電子機器」の3区分に変わります。また、従事可能な業務の範囲が従来より拡大します。
●変更後の業務区分
区分 | 対象業務 | 備考 (上乗せ、必要な免許当等) |
---|---|---|
造船 | 監督者の指示を理解し、又は自らの判断により船舶の製造工程の作業に従事 | ー |
舶用機械 | 監督者の指示を理解し、又は自らの判断により舶用機械の製造工程の作業に従事 | ー |
舶用電気電子機器 | 監督者の指示を理解し、又は自らの判断により舶用電気電子機器の製造工程の作業に従事 | ー |
※備考について:基本的な項目に上乗せになっている項目やその業務に従事するために必要な免許等を記載しております。もしくは、技能実習2号修了者はこれらの試験が免除となります。
●追加になる対象職種(試験区分)
技能実習2号修了者の移行対象職種が従来よりも増えました。以下の試験区分で確認される技能を使用する業務に従事ができるようになります。
区分 | 試験区分 |
---|---|
造船 | 造船・舶用工業分野特定技能1号 試験(造船)、技能検定3級(塗装)、技能検定3級(とび)、技能検定3級(配管) |
舶用機械 | 造船・舶用工業分野特定技能1号 試験(舶用機械)、技能検定3級(塗装)、技能検定3級(仕上げ)、技能検定3級(機械加工)、技能検定3級(配管)、技能検定3級(鋳造)、技能検定3級(機械保全) |
舶用電気電子機器 | 造船・舶用工業分野特定技能1号 試験(舶用電気電子機器)、技能検定3級(機械加工)、技能検定3級(電気機器組立て)、技能検定3級(電子機器組立て)、技能検定3級(プリント配線板製造)、技能検定3級(配管)、技能検定3級(機械保全) |
【補足】特定技能とは ~適切な受け入れで戦力に~
特定技能は、特に人手不足の著しい産業において、一定水準以上の技能や知識を持ち、最低限生活や業務に必要な日本語能力を持った外国人を対象に、決められた産業で限定された業務内容を行うことができる在留資格です。
- 特定技能1号:特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格
- 特定技能2号:特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格
特定産業分野(12分野):介護、ビルクリーニング、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食
特定技能は、一定水準以上の技能や知識を持ち、最低限生活や業務に必要な日本語能力を持った外国人を対象に、決められた産業で限定された業務内容を行うことができる在留資格です。
よく比較をされる在留資格『技能実習』での実績や反省をもとに、様々な工夫がされた制度になっています。そのため、他の在留資格よりも求められる要件は細かく設定されており、すべてを満たす必要があります。
他の在留資格と特に異なるポイントとしては、『特定技能』では受入前に特定技能人材の公私の生活を支える「支援計画」を作成し、それをもとにサポートを行うことが挙げられます。「支援計画」では、具体的には入国から就業までの私生活のサポートや、また日本語学習の機会や日本文化になじむための補助、定期的な面談や相談・苦情の対応などを行います。このため、自社でできないと判断した場合は「支援計画」を行うための別機関である「登録支援機関」(全国にある民間企業)に実行を委託することもできます。
「特定技能」が複雑と言われる理由に「支援計画」以外の部分では、入管に関する法令(出入国管理及び難民認定法)以外にも、労働関係法令、租税関係の法令など遵守できているか確認すべき法令の範囲が広く、そのため申請時の提出書類が多いことも挙げられます。
具体的には、以下の大枠4点の基準から審査がされることになります。「どこでも」「誰でも」「どのような」業務でも特定技能人材として雇用・就労できるわけでは無く、細かく決められた全ての要件・基準を満たしていなければなりません。
- 特定技能外国人が満たすべき基準
- 受入機関自体が満たすべき基準
- 特定技能雇用契約が満たすべき基準
- 支援計画が満たすべき基準
在留期間は、『特定技能1号』の場合は「4か月」「6ヶ月」「1年」で通算で上限5年の在留、『特定技能2号』は「6ヶ月」「1年」「3年」が与えられ、更新をし続ければ「永住者」ビザの申請も将来的には可能です。
まとめ
以上、特定技能の分野拡大について解説しました。外国人雇用は初めての場合には、ハードルが高く感じられることも多いかもしれません。特定技能は受入前に定めた支援計画に則ってサポートを行う仕組みがあります。「登録支援機関」といった強力なサポーターも活用できるのも特徴です。適切に受け入れれば企業の戦力になることは間違いないでしょう。
当事務所・就労ビザホームページでも解説しております。順次リリース情報もこちらで解説予定です。是非、チェックをお願いします。